慢性腎臓病(CKD)の病期分類
CKDの2次的な病期分類
1. タンパク尿による2次分類
腎前性および腎後性の原因を除外した上で,腎性タンパク尿を確定することが目的である。
標準的なディップスティック法による尿検査では偽陽性が出やすくなることがあるため, スルホサリチル酸比濁法 6)など, より特異的なスクリーニング検査を実施することを臨床医は検討すべきである。
尿路の炎症や出血を示す所見がない場合,または血漿タンパク質の定期的な測定により異常タンパク血症が除外される場合, 尿中のタンパク/クレアチニン比(UP/C)は全ての症例について測定する必要がある。 理想的には,少なくとも2週間以上の期間にわたって収集された2つ以上の尿サンプルに基づいて, 2次分類を行うことが望ましい。
UP/C値 | 2次分類 |
---|---|
犬 | |
< 0.2 | 非タンパク尿 |
0.2〜0.5 | タンパク尿境界域 |
> 0.5 | タンパク尿 |
継続的にタンパク尿の境界域を示している犬では2ヵ月以内に再検査をし, 結果に応じて適宜,再分類する必要がある。
非タンパク尿およびタンパク尿境界域の範囲にあるUP/Cは,「微量アルブミン尿」に分類することができる。 現在のところ,将来的な腎臓の健康状態の予測における微量アルブミン尿の重要性はまだ分かっていない。 IRISはこのレベルのタンパク尿を継続して観察することを推奨している。
腎機能障害の進行に伴ってタンパク尿が減少することがあるため,stage 3およびstage 4の猫では,タンパク尿が認められる頻度が低下する可能性がある。
糸球体性高血圧,ろ過圧,およびタンパク尿を低下させるために行われるあらゆる治療に対する反応について,UP/Cを用いて定期的に観察する必要がある。
2. 動脈圧による2次分類
犬は,測定条件および実施される複数回の測定に予めなれさせておく必要がある。 最終的な2次分類は,複数回の収縮期血圧測定の結果に基づいて行われる。 可能であれば異なる日に病院へ複数回来院した際の測定結果を用いることが望ましいが,1回の来院時に2時間以上の間隔をおいて複数回測定を行うことも可能である。 標的器官へのダメージのリスクの度合い,および標的器官のダメージや合併症を示す所見,収縮期血圧により2次分類する。
多くの犬の場合,IRISが定める血圧の2次分類は以下のとおりである。
収縮期血圧 (mmHg) |
血圧による2次分類 | 将来の標的器官への ダメージリスク |
---|---|---|
< 150 | 正常血圧 | 最小 |
150〜159 | 境界域高血圧 | 低 |
160〜179 | 高血圧 | 中 |
≧ 180 | 重度高血圧 | 高 |
しかし,サイトハウンドなどの犬種で顕著であるように,一部の犬種では他の犬種よりも血圧が高い傾向がある。 可能であれば,犬種別の基準範囲を適用することが望ましい(高血圧傾向の犬種におけるリスク分類については付録を参照)。
タンパク尿と同様に,標的器官へのダメージを示す所見がない場合,血圧の測定値が持続的に特定の分類に入ることを示す所見が重要になる。 ここで言う血圧上昇の「持続性」については,これらの血圧2次分類において,以下の期間に行った複数回の測定に基づき判断する。
- 尿中タンパクの定量検査を行う。同時に尿中クレアチニン値を測定し,UP/Cを算出する。