犬と猫の
慢性腎臓病の治療

治療に関する
IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)
からの提言
〈 2016年度版 〉

監訳:
渡邊俊文(麻布大学附属動物病院,IRISメンバー)
三品美夏(麻布大学附属動物病院)

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IRISアイリスとは

IRIS(the International Renal Interest Society)は, 小動物の腎臓病に対する科学的理解を深めることを目的に設立された。 本研究会は,1998年にオーストリアのウィーンで開かれた European Society of Veterinary Internal Medicine(欧州獣医内科学会)の第8回年次大会において設立された。

IRISでは,2016年現在11ヵ国15名の獣医学専門家による理事会が主体となり, 犬と猫の腎臓病に対する臨床獣医師の診断,理解,治療方法を向上させることを目標として活動している。

この目標を達成するため,本研究会は慢性腎臓病の初期における正確な診断方法と新しい治療方法を探求している。

本研究会の主要な目的のひとつは,小動物の腎臓病の推奨する治療方法に加え, 進行度を診断および評価する国際的ガイドライン(IRIS慢性腎臓病ステージング)を確立することである。

獣医学の腎臓病の分野にはまだ学ぶことが多くあり,IRISは腎臓病に対する理解と治療方法の進歩に専念している。

IRISの推奨する治療方法

慢性腎臓病(CKD)に対しては,それぞれの動物の状態に合わせた個別の治療が必要となる。 以下で推奨する治療方法は,各病期のほとんどの動物にとって,治療の出発点として有効である。 CKDの動物の状態は継続的なモニタリングが理想であり,治療方法はその反応に応じて変えていく必要がある。

提示した治療方法の中には,犬や猫では認可されていないものも含まれており,推奨用量は治療経験から得られたものである。 いずれの治療も,それぞれの動物に対するリスクと便益を考えてから行うことは獣医師の責務である。